2024.11.30
目次
飽和水蒸気量・絶対湿度・相対湿度
(ややこしいな~と思う人は、最後に書いている、ちょうどいい塩梅の温度と相対湿度の部分だけ見てもらっても構いません)
いきなりですが、例えます。教室に椅子を目いっぱい並べて、生徒が座っていく様子をイメージしてください。その教室に椅子を目いっぱい並べると、椅子を30個置くことができました。そこに生徒が15人来て15個の椅子が埋まりました。椅子が埋まっている割合は50%ですね。
はい、これが、飽和水蒸気量と絶対湿度と相対湿度です。ざっくりしすぎですね。少し説明します。
飽和水蒸気量とは、1㎥の空気中に含むことができる最大の水蒸気量。例でいうといっぱい並べた椅子の数(30個)ですね。つまり椅子は、水蒸気と考えてもらたらOKです。次に絶対湿度とは、実際に空気中に含んでいる水蒸気量。例でいうと埋まっている椅子の数(15個)です。相対湿度とは、飽和水蒸気量に対する絶対湿度の割合。例でいうと、椅子が埋まっている割合(50%)です。
私たちが普段「湿度」と呼んでいるのは、相対湿度ですが、良い住環境を考える上では、飽和水蒸気量と絶対湿度を合わせて理解することはとっても重要です。
温度と飽和水蒸気量の関係
飽和水蒸気量とは、1㎥の空気中に含むことができる最大の水蒸気量でしたが、下記グラフのように、温度によって飽和水蒸気量が違うことを確認してください。
(出典:ヒートテック株式会社HP)
20℃の空気は、MAX17.3gの水分を含むことができますが、10℃の空気は、9.4gしか水分を含むことできません。例えば、20℃・絶対湿度9.4g/㎥の空気が、10℃の物体に衝突すると、水蒸気が液体に変わり始めます。これは、10℃の空気は9.4gまでしか水分を含むことができないためです。この現象がいわゆる結露ですね。
言い方を変えると、絶対湿度9.4gの空気は10℃を下回ると結露すると言えます。この結露が始まる温度を露点温度といいます。結露については、以下コラムで詳しく触れていますので、興味ある方は確認してください。
関連記事:『窓の結露を防ぐたった3つのポイント』 ~結露のメカニズム~
絶対湿度とインフルエンザ対策
絶対湿度とは、1㎥あたりに含まれる水蒸気量でしたね。単位は、g/㎥です。この水蒸気量は、風邪やインフルエンザの予防と結露を考える際にとても重要になっていきます。冬にインフルエンザや風邪が流行るのは、空気の乾燥が主原因です。ウイルスは乾燥している空気が大好きで、湿っている空気が嫌いなのです。
<インフルエンザウイルスの6時間後生存確率>
絶対湿度11g/㎥→5%
絶対湿度7g/㎥→20%
絶対湿度5g/㎥→50%
この結果を踏まえると、ウイルス予防の観点だけでいうと、絶対湿度のベストは11g/㎥以上、最低でも7g/㎥以上をキープすることが目安となります。(絶対湿度には容積絶対湿度と重量絶対湿度があり、ここでは容積絶対湿度を使っています。詳細は理解しなくもてOKです。)
ウイルス予防と結露対策の矛盾
ならば、絶対湿度は高ければ高いほどいいのでは?そんな疑問がわいてくると思います。ウイルス予防だけなら確かにそうなのですが、絶対湿度を高めすぎると別の問題が起きます。それは、結露です。絶対湿度が高いと結露やすくなってしまうのです。
例えば、絶対湿度13g/㎥の露点温度(結露が始まる温度)は、15℃。冬の窓であれば、オール樹脂サッシでも10℃前後まで下がりますので、余裕で結露します。絶対湿度11g/㎥の露点温度でも、12℃なのでこれも結露のリスクが高いです。絶対湿度9g/㎥でようやく露点温度が、9℃になるため、オール樹脂サッシにすれば、結露のリスクをおさえることができます。
ウイルスのこと考えると絶対湿度は高く、結露のことを考えると絶対湿度は低く・・・ちょうどいい塩梅が難しいですが、目安は、【7~11g/㎥】にするのが良いと思います。7g/㎥を下回るとウイルス蔓延が加速し、11g/㎥を超えると結露発生が加速し、カビの原因となるためです。
適度な温度と相対湿度の目安
相対湿度とは、飽和水蒸気量に対する絶対湿度の割合でした。みなさんがよく使っている「湿度」は相対湿度のこと。単位はご存知の通り%。気を付けてほしいのは、同じ相対湿度でも、温度によって絶対湿度は異なるということです。ん???わかりにくいですね。
例えば、同じ相対湿度50%だとして、22℃であれば絶対湿度は9.7g/㎥(飽和水蒸気量19.4g/㎥×50%)、16℃であれば6.8g/㎥(飽和水蒸気量13.6g/㎥×50%)となります。なので、相対湿度50%だけを意識していたら、もし温度が16℃であれば、ウイルス危険ゾーンの7g./㎥を下回ってしまうことになるので、温度と相対湿度はセットで考えないといけないってことです!
では最後に、適度な温度と相対湿度の目安を確認しましょう。ちょうどいい塩梅絶対湿度【7~11g/㎥】を実現する温度と相対湿度はどれくらいでしょうか?22℃で湿度60%だと、水分量は11.6g。これだと11g/㎥を超えているため、結露が加速します。一方18℃で湿度45%だと、水分量は6.8g。これでは、7g/㎥を下回っているため、ウイルス蔓延が加速します。
結論、ちょうどいい塩梅の温度と相対湿度は、ざっくり【温度18~22℃・湿度45~60%】のゾーン。もう少し詳しく言うと、
18℃→50~60%
20℃→45~55%
22℃→40~50%
これを意識して、室内環境をコントロールしてもられば、ウイルス蔓延と結露を同時に予防することができます。