2024.11.30
言わずとも知れたことですが、地盤は「基礎のさらに下」で家を支えるものですから、地震対策としてめちゃくちゃ重要。
ただお金もかかる話ですし、
- 地盤工事ってどこまでやればいいの?
- セカンドオピニオンはやった方が良いの?
- 地盤保証って何年必要なの?理由は?
- そもそも地盤が強い土地の選び方は?
などの疑問も多いと思います。
そこで今回は、地盤調査・地盤改良における疑問をまるっと解決できるようお話ししていきますので、ぜひ最後までお付き合いください!
YouTube動画でも分かりやすく解説していますので、動画で学びたい方は以下からご覧ください。
関連動画(YouTube):『【削除覚悟】コスパ最強!地盤改良の調査会社の選び方【完全攻略】』
目次
地盤改良業界の”闇”について…
地盤改良は「工務店」→「工事会社」に依頼するわけじゃない
実は、地盤改良工事は、「工務店」から直接「地盤改良会社」に依頼するわけではありません。
工務店が「地盤保証会社」に依頼を行って、この保証会社から「10~20年間の地盤保証をするので、それに見合った工事をしてくださいね」と、「地盤保証会社」が「地盤改良会社」に工事を依頼する…というような流れで進んでいきます。
工務店と工事会社の間に、「地盤保証会社」というのが入るわけですね。
ただこれ自体は、保証のために必要なことですし、別に悪いことでもありません。問題はここから先。
地盤保証会社が入ることで生じる「忖度」
地盤保証会社というのは、工務店からの依頼を工事会社に回すだけなので、ビジネスモデル的にあまり収益性が高くありません。
そこでこれを補うために、地盤保証会社は工事会社側から工事内容に対するキックバックを受けとるような仕組みになっています。
となると、過剰工事(必要以上の工事)になった方が「保証会社も工事会社も双方が儲かる」わけです。
このように地盤改良は、その座組み的にも工事内容が過剰になりやすい傾向にあるんです。
もちろん「どうせ工事するならしっかりやっておきたい」という人もいると思いますが、大前提として「過剰工事になりやすい」という背景も理解した上で検討を進めていきましょう。
「地盤改良工事」って何のためにやるの?
「地盤改良工事」とは?
これは、その名の通り地盤を強くする工事のことです。
家を建てると、家の重みで地盤が多少沈むのですが、地面に向かってまっすぐに沈んでくれれば問題ありません。ただ上画像のように、斜めに沈んでしまうと大問題。
このように、家が斜めに沈んでしまうことを「不同沈下」と言うのですが、この不同沈下を防ぐ工事こそ「地盤改良工事」というわけです。
「地盤沈下」と何が違うの?
(出典:All About)
「不同沈下」よりもよく聞く言葉に「地盤沈下」というものがありますが、地盤沈下は上記で挙げたように、家が地面に対して垂直に沈むこと。
地盤沈下のように、家全体が均等に沈むというのは、どんな家でも起きるものですし、大きな問題ではありません。
問題なのは、斜めに沈む「不同沈下」なので、基礎知識としてしっかり押さえておきましょう。
地盤改良工事の種類・方法は?
地盤改良工事にも、以下のように色々な方法があります。
地盤改良工事の種類
- 表層改良
表面(地表)を固い土にする - 柱状改良
コンクリートの柱を杭として支える - 鋼管杭
鉄の棒(鋼管)で支える
具体的にどの工事になるのか?については、保証会社の指示次第なので、施主側がここまで把握する必要はありませんが、一応ふんわり知っておいてください。
実は地盤改良にも「デメリット」がある!
地盤改良工事の際には、地盤を固めるためにも地面に杭などを埋めるわけですが、これは扱い上「地中埋設物」となります。
このように地盤改良を行うと、地盤が強固になる反面、将来的に家・土地を売ろうとした際に「地中障害がある」となり、資産価値を落とすことになります。
工事のコストもかかりますし資産価値も落とすので、できることなら地盤改良工事はしない方が良いです。ただし、不同沈下になると困るので、必要最低限、つまり80点くらいの地盤改良はしておきましょう、というのがちょうどいい塩梅だと考えています。
売る時に杭を抜けばいいのでは…?
実は、杭を抜くのは施工するよりも大変で多額のお金がかかります。
現実的には杭がある場所を避けて新しい家を建てたり、杭と同じ位置に家が来るなら再利用することになります。
このような結果になるので「土地の資産価値的には、できることなら地盤改良工事はやらない方が良い」ということは頭に入れておいてください。
絶対に覚えておきたい「地盤保証」について
「地盤保証」ってそもそも必要?
【結論】地盤改良(地盤保証)は必要!
結論、地盤保証は必須です。
当然地盤保証を受けるためには、地盤調査・改良が必要になるわけなので、その分コストもかかりますが必須として考えてもらえればOKです。
理由:地盤は「瑕疵担保責任」の適用範囲外だから
<住宅瑕疵担保責任の範囲>
(出典:住宅瑕疵担保責任保険協会)
現在日本には、「瑕疵(かし)担保責任」という消費者保護のための制度があり、家が完成してから10年間であれば、不具合(瑕疵)があった場合、住宅会社側に責任をとらせることができます。
ただこの適用範囲は、「構造耐力上主要な部分」、もしくは「雨水の浸入を防止する部分」に対する不具合のみ。そして木造住宅の場合、対象となる部分は「基礎」までで「地盤改良工事部分」までは保証されないんです。
つまり地盤改良工事に何らかの不具合があった場合、「瑕疵担保責任制度」は活用できないので、瑕疵担保責任制度とは別で、地盤改良工事の不具合に備える保険(地盤保証)が必要というわけです。
関連記事:『【契約前に必読】標準仕様(見積もり)でチェックすべき8項目|「保証・工事・アフター」編』
【結論】地盤保証のちょうどいい塩梅は「10年」
地盤保証については、「10年」or「20年」から選べますが、「10年」がちょうどいい塩梅です。
20年保証にすると、過剰工事になる可能性も高くなりますし、その分コストも何十万~何百万円と大幅に跳ね上がります。
中には、「地盤は足元だし、大事だからちょっと過剰なぐらいの方が良いんじゃない?」と言われることもありますが、80点くらいの「ちょうどいい塩梅」を目指すのであれば「10年保証」でOKです。(もちろん個人の判断なので、20年保証にしても問題ありません。)
地盤保証が「10年」でOKな理由は?
(出典:ジャパンホームシールド)
理由①:不同沈下は「家を建ててから10年以内」に生じるケースが多い
先ほど、警戒すべきは「不同沈下」というお話しをしましたが、大体不同沈下が生じるのは「家を建ててから10年間の間」と言われています。
そのため最低限、10年間保証されていれば十分というわけです。
理由②:不同沈下の発生確率が低い+保証適用がかなり厳しい
まず、そもそも不同沈下の発生確率がさほど高くない、という点が挙げられます。
また万が一不同沈下が起こったとしても、保証を受けるためには「どのぐらい傾いていないと保証が下りない」というような条件があります。
具体的には「0.29°(5/1000)以上傾いている状態」である必要があるのですが、複数の地盤保証会社への聞き取り調査によると、この条件に当てはまり保証対象となる確率は「約10,000棟に1棟」程度。つまり起こる確率も低ければ、保証を受けれる確率もめちゃくちゃ低いわけです。
これらの観点から、BE ENOUGHでは「10年保証」がちょうどいい塩梅、としています。ただし最後に決めるのは自分。やりたい人は20年保証でもなんでもやってください。
ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。
液状化で傾いたら地盤保証は効く?
液状化現象は地震が原因で起きる現象なので、液状化で家が傾いたとしても「地盤保証」は効きません。
液状化現象に対応するには、別途「地震保険」に入っておく必要があるのですが、地震保険で「全損」が適用される傾きは「1°(17/1000)」以上です。
先の地盤保証が適用できるのが「5/1000」からですから、不同沈下の時よりもザっと3倍以上傾いていないと地震保険が適用できないわけです。このように地震保険は、地盤保証の規定よりも厳しいため、「地震保険に入っているから液状化も安心」というのは少し間違っています。
そのため、そもそも液状化しない土地を選ぶことが大切と覚えておきましょう。
そもそも地盤が強い土地の探し方は?
地盤データ×ハザードマップで地盤をチェック!
ここまでの話で、「そもそも地盤が強い土地を購入するのが理想」というのが分かってもらえたと思いますが、どうやって地盤が強い土地を探せばいいんだ、という話ですよね。
地盤の強いor弱いというのは、以下2つのデータを見てもらえれば大体わかりますので、まだ土地の購入前であれば以下データも見ながら検討を進めていきましょう。
- 「地盤データ」をチェックする
⇒住宅会社・HMが加入している「地盤ネット」から閲覧 - 「ハザードマップ」をチェックする
⇒水災・地震/津波マップ/液状化マップを要チェック
「地盤の強さ」と「利便性」は矛盾しがち!
ただ注意点として、「地盤の強さ」と「利便性」は大体矛盾しています。
例えば山の周りは地盤が固い傾向にあるのですが、その分お店や公共交通機関も少なく利便性が低いですよね。対する川・平野は、地盤が緩いかもしれませんが、お店も多く利便性に優れてます。
このように、地盤の強い土地にこだわりすぎると、「いい土地が全く見つからない!」となってしまうので、せやま的には「ある程度利便性を重視したうえで、必要に応じて地盤改良を行って、地盤保証10年の認定を受ける」というのがいいと思います。
コスパがいい地盤保証会社の選び方は?
「独立型の地盤調査会社」がベスト!
地盤保証会社は、大きく分けて以下の2種類。
- 【A】「地盤改良会社」と提携している会社
- 【B】「地盤改良会社」と提携していない会社
一番最初の話に戻るのですが、【A】のように地盤改良の工事会社と提携している会社の場合、工事費用に対してキックバック(紹介料)を受け取っているケースが多いので過剰設計になりがち。
「余裕のある設計」と言えば聞こえはいいですが、ちょうどいい塩梅(80点)を目指すのであれば、【B】のようにどの工事会社とも提携していない独立型の地盤調査会社がベストです。
ちなみにBE ENOUGHでは、「地盤ネットホールディングス」という独立型の地盤調査会社をよく使ってますね。
地盤調査のセカンドオピニオンってアリ?
地盤調査のセカンドオピニオンとは?
「工事費用が高すぎるー!」となった場合、別の地盤保証会社に再度調査をしてもらうことを「セカンドオピニオン」と言います。
このようなセカンドオピニオンを行う場合、追加で数万円ほどかかりますが、あまりに地盤改良工事費用が高く、工事費用の妥当性を判断したい場合には有効です。
ただセカンドオピニオンをした上で、「工事費用がほとんど一緒」ということもありますし、その場合セカンドオピニオン分のコストが無駄になりますから、セカンドオピニオンを検討する場合にはこういったリスクも考慮しておきましょう。
断られるケースもあるが、可能ならやるのも”アリ”
(出典:GIR)
せやまとしては、地盤調査のセカンドオピニオンは”アリ”だと考えています。
ただ住宅会社・HMによってはセカンドオピニオンを嫌がったり、断ってくる会社もあるので、まずは営業担当に確認してみましょう。
セカンドオピニオンをするなら同時に調査を!
また1社目の調査結果が出てから「じゃあセカンドオピニオンをします!」と言っても、工程的に時間が厳しい可能性があります。
そのためセカンドオピニオンをするのであれば、住宅会社お抱えの地盤保証会社と「同時期」に調査してもらうようにしましょう。
地盤改良の工事費用っていつ分かる?
地盤改良にかかる費用については、実際に土地を購入してスクリューウエイト貫入試験(SWS)という調査を行わないと分かりません。
となると資金計画を組む時に困ってしまうわけですが、先に「大体このぐらいだろう」という金額で予算取りだけしておきましょう。
地盤データを見れば大体の予測はつきますが、分からない場合は最低限「50万円」くらい予算取りしておけばよいでしょう。
また住宅会社が出してくる予算表内に、「地盤調査結果による」と書かれているケースもありますが、こういった場合は大抵資金計画内に地盤改良費用が入っていないので注意してください。
「地盤調査報告書」はどこを見ればいい?
地盤調査報告書でチェックすべきポイントは?
地盤調査が完了したタイミングで、「工事見積り」と合わせて「地盤調査報告書」がもらえると思います。
パッと見むずかしそうですが、地盤調査報告書で見るべきポイントは「土質名」と「換算N値」の2点のみでOK。
今回は、調査方法の中でも最も一般的な「スウェーデン式サウンディング試験」の報告書を例に解説していきます。
報告書がざっくり見れるようになったら十分なので、換算N値の計算方法などの詳しい内容は理解しなくてOKです
見るべき点①:地盤調査報告書の「土質名」
土質名とは、その名の通り「地盤がどういった土で構成されているか?」を示すものです。
この土質名には、「粘性土」と「砂質土」がありますが、この土質によって「良い」or「悪い」があるわけではありませんので、とりあえずは「どういう土質なのか?」を見ておきましょう。
見るべき点②:地盤調査報告書の「換算N値」
次に確認するのが「換算N値」ですが、簡単に言うと「地盤の固さ」を示します。
先に確認してもらった「土質名」ごとに「軟弱地盤とする換算N値の基準値」が異なるため、「土質名」と「換算N値」を合わせてチェックしていきましょう。
- 土質名が「粘性土」の場合
「軟弱地盤」と判断する基準値は、「換算N値=3.0以下」 - 土質名が「砂質土」の場合
「軟弱地盤」と判断する基準値は、「換算N値=5.0以下」
実際に調査報告書を読み取ってみよう!
では、実際に上の地盤調査報告書を元に、「地盤の強さ」を見てみましょう。
まず土質名は「砂質土」なので、軟弱地盤と判断する基準値は「換算N値=5.0以下」。それぞれ深さごとに見ていくとこんな感じ。
貫入深さ (地表からの深さ) |
換算N値 |
---|---|
0.25m | 2.0(軟弱) |
0.50m | 2.0(軟弱) |
0.75m | 3.8(軟弱) |
1.00m | 7.6(-) |
1.25m | 7.0(-) |
「深さ:0.75m」あたりまでは、換算N値が5.0を下回っていますが、「深さ:1.00m」より深くなると換算N値は5.0を上回り始めていますね。
次に、このデータを見て「この地盤は緩いの?強いの?」という部分を判断していくわけですが、今回の場合あくまで「軟弱地盤なのかどうか?」を見るのが目的ですから、ざっくり以下のように見てもらえれば十分です。
- 深い位置でも換算N値が5.0以下⇒地盤が弱い
- 浅い場所でも換算N値が5.0を超える⇒軟弱地盤ではない
ここからは、この地盤調査結果を元に、地盤保証会社・地盤改良工事会社が「どれくらいの地盤改良工事を行えば、地盤保証できる状態になるのか?」を判断するわけですが、もし軟弱地盤じゃないのに工事項目が多く、見積もりが異様に高かったら、一旦営業担当に確認してみましょう。
まとめ
「地盤調査・地盤改良」で、施主が覚えておくべき点は以下の通り。
- 【大前提】地盤改良は「過剰工事」になりがち!
- 地盤改良工事とは?
⇒「不同沈下」を防ぐための工事 - 地盤保証ってそもそも必要?
⇒地盤は「瑕疵担保責任の範囲外」なので必須!
⇒保証年数は「10年」がちょうどいい塩梅!
液状化現象は「地盤保証」の範囲外(地震保険) - そもそも地盤が強い土地の探し方は?
①:「地盤データ」をチェック
②:「ハザードマップ」をチェック
⇒「利便性」と「地盤の強さ」は矛盾するので地盤にこだわりすぎないように! - 地盤調査のセカンドオピニオンは?
⇒アリだが金額が変わらないケースもある
⇒セカンドオピニオンをする場合は調査タイミングも注意! - 調査報告書の見方は?
⇒「土質名」と「換算N値」の2つで判断!
⇒地盤が強いのに工事項目が多い場合は営業に確認を!
ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。