2024.11.30
家の資金計画の内訳は、「建物+追加費用+土地+造成費用+諸費用」で成り立っていますが、今回は「諸費用」について解説していきます。
諸費用の内容と合わせて、金額相場や価格交渉の可否を理解しておくと、費用節約に役立ちます。
目次
【前提】営業マンは「正確な諸費用」を教えてくれない
諸費用のシミュレーションで頼りになるのは、「施主自身」です。
というのも住宅営業マンは、諸費用の金額を正直に伝えてしまうと、総予算が大きく見えてしまうことからあまり正確にシミュレーションしたがらないんです。
今回の記事では、各内容に対して「具体的な金額相場」も記載しますが、状況によって費用は変わりますので参考程度に役立ててください。
また「交渉可能な費用なのか?」などについても合わせて解説していきますが、あまり値切り交渉をしすぎると住宅会社側も嫌気がさしてしまうのでほどほどにしましょう。
資金計画は「自分で」作れるようになろう!
上記の通り、営業マンは資金計画をあまり厳密に作りたがりません。
そのため諸費用だけでなく、家づくりにかかる費用については予算オーバーを防ぐためにも施主自身がしっかり把握・管理していきましょう。
以下にて、せやまがつくった資金計画表のテンプレートを配布していますので、こちらを役立てながら計画を進めてみてください。
【結論】注文住宅で必要な「諸費用」一覧
まずは注文住宅における「諸費用」について一覧を見ていきましょう。ざっと以下の通りです。
マーカー部分:価格交渉・削減が可能なもの
①契約関連 | ・土地仲介手数料 ・土地固定資産税精算金 ・印紙代(土地売買契約書) ・印紙代(建物請負契約書) |
---|---|
②入居準備 | ・外構工事費 ・アンテナ工事費 ・エアコン・家具・家電・引越費等 |
③ローン |
・事務手数料(※) :フラット35の場合は窓口選びで削減可 2:ローンの組み方次第では削減可 |
④登記 |
<土地決済時> <古家解体時> <建物完成時> 報酬面のみ費用交渉可 |
⑤地鎮祭 |
・地鎮祭準備費 |
⑥申請・保険 |
・建築確認印紙・手数料 交渉は不可だが、相見積もり推奨 |
それでは、それぞれ詳しく解説していきましょう。
諸費用①:「契約関連」
「契約関連」の諸費用に関する内訳は?
契約時に必要な諸費用です。この中で交渉できるのは、土地仲介手数料のみです。
土地仲介手数料(交渉可)
(出典:東京グランドネクスト不動産)
一般的に、(土地価格×3%+60,000円)+消費税がかかります。土地価格2,000万円(消費税10%)の場合、仲介手数料は、726,000円かかります。結構でかいですよね?
土地の所有者が売主であった場合には、0円になることがありますし、上記の計算式はあくまで「上限」なので、交渉できる場合もあります。
土地固定資産税精算金
<固定資産税の計算例>
(出典:All about)
土地所有者が払った1年分の固定資産税を、決済時期に合わせて、期間割して支払います。起算日は地域によって異なり、一般的に、関東は1月1日、関西は4月1日です。
印紙代(建物請負契約書)
<建設工事請負契約書の印紙税>
(出典:国税庁)
建物の金額によって、印紙代が定められています。軽減措置が継続している期間中は、軽減税率の金額が適用されますので、ほとんどの人が1万円です。(契約金額1,000~5,000万円)
印紙代(土地売買契約書)
<不動産売買契約書の印紙税>
(出典:国税庁)
土地の金額によって、印紙代が定められています。軽減措置が継続している期間中は、軽減税率の金額が適用されますので、ほとんどの人が1万円です。(契約金額1,000~5,000万円)
「土地仲介手数料」を節約・交渉するコツは?
<取引態様の欄に注目!>
(出典:LIFULL HOME’S ※一部加工)
不動産情報の「取引態様」という欄を確認しましょう。
土地価格も含めて、お得に購入するためのせやま的優先順位は以下の通りです。
土地をお得に購入するための優先順位
- ①「売主」
土地の所有者が直接販売
⇒仲介手数料が不要で、土地価格交渉もしやすいので最優先。 - ②「代理」
売主の代理で販売
⇒売主と直接交渉できるので、土地価格交渉がしやすく、仲介手数料も不要になる場合がある。 - ③「専任/専属専任」
売主と直接つながっている不動産会社
⇒売主へ直接交渉できるので、土地価格交渉がしやすい。仲介手数料の交渉は難しい場合が多い。 - ④「一般/仲介/媒介」
売主と直接つながっていない不動産会社
⇒売主へ直接交渉できないので、土地価格交渉が行いにくい。一般/仲介/媒介は、誰でも仲介できる物件なので、不動産会社に行かずに、住宅会社に仲介してもらえないか相談。住宅会社的には、家を建てたいので、土地仲介手数料を値引きしてくれる可能性が十分にあります。
関連記事:『注文住宅のための「土地の探し方」と“いい土地”を見つけた時の対応・コツを徹底解説!』
諸費用②:「入居準備」
「入居準備」の諸費用に関する内訳は?
入居準備費用は金額が大きいので、「まだ時間があるから」と先送りせず、契約前に資金計画に組み込んでおきましょう。
外構工事費(予算) ※交渉可
(出典:タカショー)
外構のことは後回しにしがちですが、予算組みだけは家の契約前に決めておきましょう。外構工事費用は、住宅の請負契約には含まれないことが多いです。
最低限必要なのは、駐車場の土間コンクリート(1台あたり25万円前後)、アプローチタイル(面積によるが10万円前後)、表札・ポスト・インターホン(20万円前後)、仮設工事・諸経費(工事費用の15~20%程度)を入れると、駐車場2台なら80~100万円くらいで最低限必要な工事は可能でしょう。
そこから、カーポート(1台用25万円~/2台用40万円~)やブロック塀を設置したい場合は、予算が数十万円単位で上がるので、事前にある程度のプラン想定をしておきましょう。
アンテナ工事費 ※交渉可
<スタイリッシュなアンテナ>
(出典:マスプロ電工)
テレビを何で見るか?によって工事が変わります。
シンプルに地デジでテレビを見るのか、インターネットでテレビを見るのかなど。地デジアンテナの相場は、5~15万円程(現場の電場状況による)。最近はスタイリッシュなアンテナが好まれます。
エアコン・家具・家電・引越費等 ※交渉可
<エアコンの畳数表示は、性能の低い家の南向きの場合を想定している>
(出典:ダイキン工業)
全て合わせると、100万円くらいかかる場合があるので、事前に計画しておきましょう。
ちなみに、エアコンの「●畳用」表記は、性能の低い家を想定した数値なので、ちょうどいい塩梅の基準をクリアした家なら、表記の3~4倍の広さまで対応できます。無駄に大きすぎるエアコンを買わないように気をつけましょう。
また、引越費用は値段交渉するのが当たり前。初回見積で本気の価格を提示してきた業者さんを見たことがありません。
関連記事:『【完全攻略】新築で抑えておくべき「エアコン計画」のイロハを徹底解説!』
外構・アンテナ・エアコン工事は、住宅会社の紹介がベスト?
「外構工事」について
住宅会社紹介の工事会社の方が、住宅工事との連携がスムーズで、外構も完成した状態で引渡しを受けられるのでおすすめです。
もし、知り合いに外構屋さんがいて、友達価格でやってくれたらそれが一番ですけどね。
「アンテナ工事」について
発注先は、安い方で良いのではないかと思います。アンテナ工事の見積は、電波状況が最も良い場合の金額になっていることが多いので、取り付け現場での追加費用発生にご注意を。
「エアコン工事」について
<エアコン工事の断熱・気密処理は超重要>
(出典:THS)
住宅会社紹介の工事会社をおすすめします。
エアコン工事は、適正な容量・機種・位置の決定、筋交いなどに影響しない場所への穴あけ、適切な断熱・防水処理、故障を防ぐ真空引き、化粧カバーの設置など、性能やデザインに直結する検討事項が多く、これを量販店に任せるのは心配です。
関連記事:『”穴開け”が肝!新築のエアコン設置工事で抑えておくべき「注意点」とは?』
諸費用③:「ローン諸費用」
「ローン諸費用」の諸費用に関する内訳は?
事務手数料
<フラット35の事務手数料は節約ポイント>
(出典:JAバンク)
一般の銀行であれば、30,000円+税、もしくは50,000円+税。
フラット35の事務手数料は窓口によって異なり、融資額の0.7~2%+税ほど。事務手数料が高くても何のメリットもないので、なるべく安い窓口から申し込むようにしましょう。
保証料/融資手数料
<主に3種類→融資手数料型・保証料型(一括前払い型)・保証料型(金利上乗せ型)>
(出典:りそな銀行)
一般の銀行であれば、保証料/融資手数料ともに融資額×2%+税ほど。
保証料型は、一括前払い型と金利上乗せ型(+0.2%程)が選べます。総支払額を比較して、ほとんどの人が一括前払い型を選びますが、早めに完済予定の人は、金利上乗せ型が得にある場合もあります。
ちなみに、住宅営業マンは費用を低く見せたいので、金利上乗せ型(保証料0円)で資金計画をしがち。例えば、融資3,500万円だと保証料/融資手数料は77万円とかなり大きな金額なので、前払い一括か?金利上乗せか?は、事前に想定しておきましょう。
一方、最近人気の融資手数料型は、一括前払いのみ。手数料型は、全額繰り上げ返済したらいくらかもお金が戻ってくる保証料型と違い、お金が戻ってこない代わりに、金利が安く設定されています。
保証料の代わりに、手数料を払うタイプなんだなと考えておけばOKです。
(出典:クートン)
フラット35の場合は、保証料は0円ですが、その分事務手数料が高いです。なので、保証料0円だから安い!というPRを鵜呑みにしないようにしましょう。
関連記事:『住宅ローン「フラット35」のメリット/手数料・金利を下げるテクニックは?』
ローン契約印紙代(金消契約)
<ローン契約(金消契約)の印紙代>
(出典:国税庁)
融資額によって、印紙代が定められていますが、ほとんどの人が2万円+α(融資額1,000~5,000万円)になると思います。
α部分は、条件変更等にかかる、数百円の印紙です。
つなぎ融資・分割融資費用 ※交渉不可だが、ローンの組み方次第で削減できる可能性あり
(出典:SUUMO)
大きなの現金が必要になるタイミングは、主に6回。
大きな現金が必要なタイミング
- ①土地契約(100万円程:土地手付金)
- ②建物契約(100万円程:建物契約金)
- ③土地決済(土地残金+諸費用)
- ④着工(建物価格の30%程-建物契約金:着工金)
- ⑤上棟(建物価格の40%程:中間金)
- ⑥完成(建物価格の30%程:竣工金)
①②は現金、⑥は住宅ローンの実行で行いますが、問題は金額の大きな③④⑤。
住宅ローンは完成時に融資するのが基本なので、③④⑤は、別融資を使う必要があり、この別融資の事を「つなぎ融資・分割融資」と呼び、このつなぎ融資・分割融資分の手数料や金利の費用が発生します。
関連記事:『「住宅ローン」の基礎知識と失敗しない銀行の選び方(前半)|5つのパターン別に解説』
「つなぎ融資費用」を節約する方法は?
3つの方法があります。
①一旦、現金で建替える
つなぎ融資で必要な分を一旦現金で建替えれば、節約になります。全額は無理でも一部を現金で払っておけないか、検討してみましょう。
②土地分割融資を受けて、返済を始める
家賃と土地返済分が二重になりますが、数カ月のことなので大きな支障はないかと。土地資金は、着工・中間金分に比べて、つなぎ融資期間が長いので、節約するとインパクトがあり、おすすめの方法です。
③保管金制度を使う
土地決済時(土地決済がない場合は着工金時)に全額融資してもらって、残りを銀行が保管する制度。土地決済時(土地決済がない場合は着工金時)から全額返済が始まるデメリットがありますが、つなぎ融資費用はかかりません。
ただし、保管金制度を持っている地銀や信金は、金利条件が悪い傾向があるので、つなぎ融資費用を節約しようとするあまり、住宅ローンの金利条件を悪くしてしまわないようにしましょう。
関連記事:『「住宅ローン」の基礎知識と失敗しない銀行の選び方(前半)|5つのパターン別に解説』諸費用④:「登記関連」
<登記費用の見積例(「報酬」と「登録免許税又は印紙税」に分かれている)>
登記費用は、「報酬額(日当・交通費含む)」と「登録免許税又は印紙税」に分かれます。
「報酬額(日当・交通費含む)」は、司法書士が自由に決めることができるため、割と高めの見積を出してくる事があります。見積が高ければ、交渉してOKです。
また表題登記と滅失登記は、施主自身で行うことも可能。時間が取れる方は、登記費用削減のためにトライしてみてください。(ローンを組まない場合は、所有権移転や所有権保存登記も可能)
では、土地決済時、古家解体時、建物完成時に分けて、解説していきます。
「土地決済時」の登記費用について
所有権移転登記費 ※報酬部分は交渉可
土地を購入した場合に必要となる、所有権を変更するための登記費用です。「報酬額」の相場は、30,000~35,000円程+登記簿閲覧・日当などです。所有権移転は立ち合いが必要なので、日当の相場は10,000円前後でしょう。
報酬額とは別に「登録免許税又は印紙税」が必要で、この部分は交渉できません。
担保設定登記費 ※報酬部分は交渉可
住宅ローンを組む場合に必要となる、抵当権を設定するために登記費用です。報酬額の相場は、25,000~30,000円程。報酬額とは別に「登録免許税又は印紙税」が必要で、この部分は交渉できません。
「古家の解体終了後」の登記費用について
滅失登記費用(解体がある場合) ※交渉可、施主自身で登記可
<滅失登記申請書:意外と簡単>
(出典:法務局)
古家がなくなったことを登録するための登記費用です。報酬額の相場は、40,000~45,000円程。
滅失登記は、割と簡単に施主自身で行う事ができるので、時間が確保できる人は、ぜひトライしてみてください。
「建物完成時」の登記費用について
表題登記費 ※交渉可、施主自身で登記可
建物を新たに登録するための登記費用です。
土地家屋調査士が行い、報酬の相場は70,000~80,000円程。表題登記は、施主自身で行う事も可能です。
図面作成が少し難しいですが、時間が確保できる人は、ぜひトライしてみてください。
所有権保存登記費 ※報酬部分は交渉可
建物の所有者を登録するための登記費用で、報酬額の相場として「15,000~20,000円」程。報酬額とは別に「登録免許税又は印紙税」が必要で、この部分は交渉できません。
追加担保設定費用 ※報酬部分は交渉可
建物を担保に追加設定するための登記費用です。報酬額の相場としては「25,000~30,000円」程。報酬額とは別に「登録免許税又は印紙税」が必要で、この部分は交渉できません。
住宅会社紹介の司法書士を断っても大丈夫?
契約書に、住宅会社紹介の司法書士を使うことが明記されていないなら全く問題ないです。
別の司法書士に見積依頼をして、相見積をとりましょう。金額を合わせてくれるなら、書類のやりとりなどがスムーズなので、住宅会社紹介の司法書士を使う方が良いかと思います。
諸費用⑤:「地鎮祭」
最近では、地鎮祭をする人は全体の半分程度です。信じるかどうか?の問題ですので、費用も踏まえて家族で判断してください。
地鎮祭準備費 ※交渉可
地鎮祭のテントや椅子、盛砂などの準備費用です。相場としては「35,000~40,000円」程。
玉串料・初穂料 ※交渉は罰当たり
地鎮祭を行ってもらう神社に支払う費用です。相場としては「40,000~50,000円」程。
お供え物を施主が準備するかどうか?で費用が変わりますが、準備が大変なので、神社にお任せする方が多いです。
そもそも地鎮祭ってやるべき?
神を信じるかどうか?なので、完全に個人の判断ですね。最近では、近くの神社にお参りをしたり、自分たちでお清めをするセルフ地鎮祭をする方もいます。半々くらいの印象です。
クリスマスを祝って、大晦日に寺で鐘ついて、正月に神社で願い事をする日本人なので、もう自由にやればいいです。
ただ、年配の方を中心に、「地鎮祭をしないのはあり得ない!」という意見もありますので、親が絡む場合は事前に意見を聞いておくと良いでしょう。
諸費用⑥:「申請・保険」
各種申請に必要な費用と火災保険費用について。
建築確認印紙・手数料 ※ほぼ交渉不可
<確認申請~中間検査~完了検査の流れ>
(出典:我孫子市)
建築確認・中間検査・完了検査に必要な印紙などの費用です。建物の種類などによっても異なりますが、相場は80,000~120,000円程。
公的証明発行費用/手続き費用 ※ほぼ交渉不可
公的証明を発行するための費用です。耐震等級、長期優良住宅、ベルス評価、フラット35S、次世代住宅ポイント受給など、施主が何を希望するのか?によって費用は変わってきます。
公的証明発行費用/手続き費用は、建築工事に含まれている場合とそうでない場合があるので、契約前に住宅会社に確認することをおすすめします。
火災保険料(10年分) ※交渉不可だが、相見積はすべき
<ネット保険も充実してきている>
(出典:ソニー損保)
保険会社によって金額が大きく異なるので、ネットも含めて相見積もり必須。結構ぼったくりの保険も多いです。
地震保険を除く、風災・水災も含めた保険料の相場(省令準耐火構造・10年分)は、保険金額の0.6~0.7%程。住宅ローンを組む方は加入必須です。
親戚づきあいで保険に入るのだけはやめましょうね。全然安くならないですし、解約しづらいのでメリットがないです。
風災・水災・地震保険は加入すべき?
風災は、日本中どこでも起きるので必須。ハザードマップで浸水エリアなら、水災も必須。
地震保険は、認定確率が低いので必須ではない。地震保険に入るなら、建物より家財を優先するのはあり。最終は自己判断するほかありません。
まとめ
注文住宅でかかる「諸費用」一覧は、以下の通り。
①契約関連 | ・土地仲介手数料 ・土地固定資産税精算金 ・印紙代(土地売買契約書) ・印紙代(建物請負契約書) |
---|---|
②入居準備 | ・外構工事費 ・アンテナ工事費 ・エアコン・家具・家電・引越費等 |
③ローン | ・事務手数料 ・保証料/融資手数料 ・印紙代(金消契約) ・つなぎ融資・分割融資費用 |
④登記 |
<土地決済時> <古家解体時> <建物完成時> |
⑤地鎮祭 | ・地鎮祭準備費 ・玉串料 ・初穂料 |
⑥申請・保険 | ・建築確認印紙・手数料 ・公的証明発行・手続き費用 ・火災保険料(10年分) |