2024.11.30
鉄骨住宅には「地震に強い」「シロアリ被害がない」「大空間が取れる」「3階建てなら鉄骨住宅」「火事に強い」というイメージを持つ人も多いでしょう。ただし、実はこういったイメージには間違いも多いんです。
そこで、今回は
- 鉄骨住宅の勘違い5選
- 鉄骨住宅をオススメしない理由3選
- 鉄骨住宅に関するよくある質問
など詳しく解説していきます。もちろん鉄骨住宅にもメリットはあるので、記事の最後では向いている人の特徴も紹介します。ただし、今日紹介する鉄骨住宅への勘違いやオススメしない理由を理解せずに鉄骨住宅を選ぶと「思ったより寒いし暑い」「火事に強いと思ったけど…」「シロアリ被害を受けてしまった!」なんてことになりかねません。
住宅会社があまり教えてくれない鉄骨住宅のデメリットを中心に紹介するので、ぜひ最後までご確認ください。
目次
鉄骨住宅と木造住宅とは?
住宅の分類について
住宅は「木造」と「鉄骨」の2分類ではありません。今回は以下の3つに分類して紹介します。
木造住宅
木造は、柱や梁といった躯体が全て木材で作られていて、構造を安定させる家です。木造の中にも在来工法や2×4工法、2×6工法のような分類があります。
重量鉄骨住宅
鉄骨住宅の一種が重量鉄骨です。H鋼と言われる、工場や施設で使われる厚み6mm以上の鉄骨を躯体とする家です。
鉄骨系プレハブ(軽量鉄骨)
軽量鉄骨住宅とは、厚み6mm未満の鉄骨を躯体とする家です。この中でも、工場である程度作ってきて、現場で組み立てていく家をプレハブ住宅といいます。大手ハウスメーカーが得意としています。
鉄骨住宅の勘違い5選
鉄骨住宅の勘違い①鉄骨住宅は地震に強い?
これは間違っているわけではありません。ただ、木造住宅であろうと鉄骨住宅であろうと大事なのは、構造計算・設計・施工をちゃんとすることです。そうすれば木造住宅でも鉄骨住宅でも地震に強い家になります。逆にちゃんとやらないと、どちらでも地震に弱い家になってしまいます。
質問:地震に弱い家は木造のイメージだけど?
そもそも戸建は9割以上が木造住宅ですので、倒壊している家のほとんどが木造住宅になってしまいます。また、倒壊している家は1981年以前の旧耐震か、新耐震であっても2000年以前の家である場合がほとんどです。2000年以降に建てられた家であっても、耐震等級1の家や施工ミスがあった家は地震に弱い場合があります。
このように、倒壊している家に木造住宅が多いのにも理由があるので「鉄骨だから地震に強くて木造だから地震に弱い」という線引きはしないようにしましょう。
「強い揺れの地震が繰り返し起きた時、木造だと不安」という人もいます。ただ、2016年の熊本地震では鉄骨住宅でも倒壊しています。つまり、構造によらずしっかりと構造計算をすることが大切です。耐震等級1だと設計士の腕任せになりますし、基礎の配筋量も少なくなります。耐震等級2以上は取得しましょう。
関連記事:『耐震等級だけじゃダメ!新築戸建ての「地震対策」に必須な”4項目”を徹底解説!』
鉄骨住宅の勘違い②鉄骨住宅は大空間が取れる?
「鉄骨住宅なら柱や壁のない大空間が取れるのでは?」というのは、一部間違っています。
そもそも木造住宅は、基本的には3.5mに1箇所ぐらいは柱とか壁とかを入れていかないと構造が持ちません。
「柱とか壁がない大きな空間を作りたい」という場合は鉄骨住宅になるでしょう。ただ「鉄骨住宅だったら大丈夫」というわけではないんです。厳密には重量鉄骨であれば大空間を作れます。
大手ハウスメーカーを中心にやっている鉄骨系のプレハブ住宅は、あくまで鉄骨が6mm未満の軽量鉄骨です。この軽量鉄骨の場合、柱や壁を入れなければならないスパンは、木造住宅とそんなに変わりません。
「大空間を取れるのが鉄骨住宅」ではなく「重量鉄骨であれば大空間を取れる」と覚えておきましょう。
鉄骨住宅の勘違い③鉄骨住宅は火事に強い?
これも、鉄骨住宅なのか木造住宅なのか、ということはあまり関係ありません。確かに鉄よりも木の方が燃えやすいので、木造の方が火事に弱いイメージは持ちやすいでしょう。ただ、そもそも躯体が鉄だろうと木造だろうと、それ以外の壁紙とか床材とかカーテンなどの内装建材が燃えます。「どちらの方が火事に強いか」を構造材で比べる意味はないでしょう。
強いて構造材で比較する場合、表面は木の方が燃えやすいです。ただ、木は表面が炭化するので中の方まで火が通るのが遅いため、柱と一緒に強度を失うのには時間がかかります。一方、鉄の場合はすぐには燃えませんが、一定温度を超えると変形して強度が失われます。一気に潰れてしまう可能性があります。
質問:鉄骨住宅は燃え移りに強いのでは?
これも躯体の変形のしやすさで考えると、鉄骨住宅の方が不利な場合があります。あとは外壁材の素材や、省令準耐火構造にしているかどうかというところも絡んできます。火事に強いかどうかで鉄骨住宅か木造住宅に選ぶ必要はないでしょう。
鉄骨住宅の勘違い④鉄骨住宅はシロアリ被害に遭わない?
確かに鉄骨住宅の躯体は鉄なので、シロアリ被害を受けることはありません。ただ、鉄骨住宅とはいえ、内装などには木材が使われています。「鉄骨住宅だから木材がないだろうし、シロアリ対策しなくて良いじゃん!」というのは間違いなので気をつけましょう。
また、シロアリ対策以外にも鉄骨住宅はサビ対策が必要です。木造住宅の場合はサビ対策は必要ありません。鉄骨だろうと木造だろうと一長一短です。やることはやらなければいけませんし、メンテナンスの意識はしっかり持っておきましょう。
鉄骨住宅の勘違い⑤鉄骨住宅は高級品?
確かに、重量鉄骨は高いです。同じ坪数なら木造住宅よりも高いでしょう。一方、軽量鉄骨を使うプレハブ住宅の場合、木造住宅とそれほど変わりません。
大手ハウスメーカーの中には、軽量鉄骨のブランドと木造住宅のブランドを両方持っている会社もあります。これらを同じ坪数で比べたら、それほど変わりません。なんなら木造住宅の方が高いこともあります。「鉄骨住宅だから木造住宅よりも高級品なんだ」という認識は、ちょっと間違っているでしょう。
そもそも住宅業界の場合「値段が高ければ性能・製品が良いもの」というのが成り立ちません。高い家でも断熱性能が低かったり気密性能が担保できていなかったりすることもあります。
鉄骨住宅をオススメしない理由3選
鉄骨住宅をオススメしない理由①気密性能が担保できない
これは致命的な欠点です。気密性能は「C値」という数値で表され、家に隙間がないことを示す値です。【せやま基準】では0.7以下必須で0.4以下を目指すようにしています。
鉄骨住宅は鉄でできているため、ビスを打てる場所が限定されています。これで隙間が埋めづらいため、C値はどんなに良くても2.0以下とかになってしまいます。せやまさんが言っている0.7以下なんて届かないことが多いんです。
「気密性能なんて別に良いんじゃない?」なんて言う人もいますが、気密性能はめちゃくちゃ大事です。気密性能が担保されないと、隙間風で断熱性能が落ちてしまいます。さらに隙間から部屋の中の湿気が入り込み、内部結露で壁の中の木が腐る恐れもあります。
ちゃんと換気計画を立てても、隙間があると意図しないところから空気が抜けて、思ったように換気ができない恐れがあります。空気が淀んで入れ替わらず、不健康な家になるかもしれません。
このように、気密性能を担保できないのが、鉄骨住宅をオススメしない一番の理由です。
ホールやオフィスといった施設の場合、あまり住環境を気にする必要はないので鉄骨向きです。ただ、一般の施主が住むような戸建住宅は住環境が大事なので、鉄骨住宅は避けた方が良いでしょう。
鉄骨住宅をオススメしない理由②断熱性能が低い
鉄は熱を通しやすいため、熱橋という熱が出入りする入口のようなものができてしまいがちで、断熱性能が低くなります。熱橋を断熱材で覆えば対策はとれますが、断熱性能の低い材料で家の外側を覆わなければならないのはデメリットになるでしょう。
鉄骨住宅をオススメしない理由③コスパが悪い
重量鉄骨は高いのでコストがかかります。柱や壁がない大空間が取れるので、そちらを優先する人であれば価値はあるでしょう。
一方、軽量鉄骨を使うプレハブ住宅は、扱っているのが大手ハウスメーカーだから高いんです。ただ、その割に大空間が取れるわけではないですし、気密性能も担保しづらいです。断熱性能もちょっと不利だと考えると、敢えてプレハブ住宅にするメリットが見当たりません。
よくある質問
質問①:鉄骨と木造の耐用年数の違いは?
耐用年数は、法律的に税金などを計算する時に使う理論的な数字です。木造住宅は22年、鉄骨住宅は34年に決まっています。こうして見ると鉄骨住宅の方が1.5倍くらい長持ちするように見えるでしょう。
ただ、現実的に言うと、建て方とメンテナンス次第です。これより持たない鉄骨住宅もありますし、これより長持ちする木造住宅もあります。
長持ちする家は、シロアリと雨漏り対策をしている家です。この2つをしっかり防いでいくことが大切です。
質問②:鉄骨と木造のメンテナンスに差はある?
メンテナンスに関しては、それほど費用に差はありません。ただ、木造住宅は「シロアリ被害で躯体がやられる」という鉄骨住宅にはないリスクがあります。シロアリ対策として、防蟻防湿シートを使いましょう。
日本で一番被害が多いイエシロアリ・ヤマトシロアリは光や風に弱いので、地中に巣を作ってそこから上がってきます。その経路をブロックして、その上でホウ酸などの防蟻処理をしましょう。
シロアリ対策に関しては、こちらの動画もご確認ください。
関連動画:新築戸建の正しいシロアリ対策|防蟻剤やヒノキだけでは不十分
質問③:3階建ては鉄骨の方が良い?
3階建てだからといって鉄骨住宅にこだわる必要はありません。3階建てくらいまでなら木造住宅で十分です。4階や5階建ての高層木造ビルというのも、結構実用化されていますよ。ただ、4階以上になると特殊な技術が必要になるので鉄骨住宅が優先になるでしょう。
質問④:鉄骨住宅が向いている人は?
重量鉄骨に向いているのは、とにかく大空間を取りたい人です。「商業施設やオフィスだし、断熱性能とか気密性能は要らない」「個人の家だけどパーティがしたい」という人は、そちらの方が優先度が高いので重量鉄骨にしても良いでしょう。デメリットを理解した上であれば、あとは個人の自由です。
軽量鉄骨プレハブに向いている人はあまりいません。強いて言えば、工場で作って現場で組み立てるので施工性は安定しています。木造住宅の在来工法の場合、結構職人の腕で変わってしまいます。これは木造住宅のデメリットでもあるので、施工性の安定を求めるならプレハブ住宅にするのもアリでしょう。
ただし、プレハブ住宅といっても躯体だけです。内装工事や電気工事は職人の腕次第です。「プレハブ住宅だから施工全体がめちゃくちゃ良い!」のような過度な期待はやめましょう。
また、プレハブ住宅をしている会社は大手なので知名度があります。知名度がある会社で施工したい人も、プレハブ住宅向けでしょう。
まとめ
鉄骨住宅への勘違いやオススメしない理由
- 鉄骨住宅の勘違い5選
鉄骨住宅は地震に強い?→構造計算と施工次第
鉄骨住宅は大空間が取れる?→重量鉄骨なら可能
鉄骨住宅は火事に強い?→鉄骨・木造はあまり関係ない
鉄骨住宅はシロアリ被害に遭わない→木材も使っているので対策は必要
鉄骨住宅は高級品?→重量鉄骨は高価だが、軽量鉄骨は木造と変わらない - 鉄骨住宅をオススメしない理由3選
気密性能が担保できない
断熱性能が低い
コスパが悪い