2024.11.30
「長期優良住宅」というと、税制面や性能面で得をすると考える人も多いんですが、実はほとんどの人にとってはあんまり役に立ちません。と言われると、その理由が気になりますよね。また、ほとんどの人にとっては役に立たない長期優良住宅ですが、実は一部の人には役に立つんです。
そこで、役に立たない理由とともに、長期優良住宅が役に立つ人の条件を解説していきます。
長期優良住宅に関する疑問をスッキリ解決しましょう!
本記事は、YouTubeでも分かりやすく解説しておりますので、動画で見たいという方は以下からご覧ください!
参考動画:長期優良住宅があまり役に立たない理由|性能面と税制面で解説
目次
長期優良住宅とは?
長期優良住宅とは、その名の通り長期に優良な住宅です。ある程度の規模を超えている住宅や、維持保全ができる状態を長期的に担保できる住宅が、長期優良住宅と言われます。そのため国の税制面での優遇を受けることもできます。
長期優良住宅が性能面で役に立たない理由は?
とはいえ、長期優良住宅を建てれば絶対に良い住宅になる、というわけではありません。結論を言うと、長期優良住宅の認定を取るための条件がめちゃくちゃ甘いんです。しかもチェックされる項目が、むちゃくちゃ一部に限られています。
もちろんその基準を満たすのはプラスになるので、長期優良住宅をとることは悪いことではありません。ただし、その基準をとれば本当に長期に優良な住宅になるんですか、と言われると微妙な話です。
長期優良住宅の条件に含まれるものは?
長期優良住宅をとったからといって、家の性能が良くなるとは言えません。以下、長期優良住宅に認定される条件に含まれる基準と、私の見解です。
長期優良住宅に含まれるもの | 長期優良住宅に認定される基準 | せやまの見解 |
劣化対策 | 基礎の高さ40cm以上 | 最近だと40cmぐらいにします。せやま基準では45cmを推奨 |
耐震対策 | 耐震等級2以上 | せやま基準でも最低ラインで耐震等級2以上を推奨。耐震等級3以上の会社も増えている |
省エネ基準 | 断熱等級4 | 断熱等級4とは、UA値を見ると0.87以下で甘く、平成初期くらいの基準 |
面積 | 75㎡以上 | ーーー |
保全の計画 | 屋根のメンテナンスなどの計画を提出 | 出すだけ、形骸化している可能性 |
保全の記録 | 上記の内容の記録と保存 | 当たり前の内容 |
と、当たり前の内容ばかりなんです。つまり裏を返すと、ヤバい会社を見極める基準になるくらい甘い基準だと言えるでしょう。
長期優良住宅の条件に含まれない性能面の大事な基準は?
長期優良住宅の条件は甘いとはいえ、もちろんやらないよりもやった方が良いんです。ただし、問題なのはめちゃくちゃ大事な項目が長期優良住宅に認定される条件に入っていないこと。その4つの項目とはこちら!
- 結露対策
- シロアリ対策
- 気密性能
- 換気システム
この家を維持するために大事な項目が抜けているので、長期優良住宅をとるだけでは性能面で全く期待できません。
では、なぜそうなってしまうのでしょうか。これらの項目が含まれていないデメリットを詳しく解説していきます。
重要な項目①結露対策
結露対策をしないと、内部結露によって窓のサッシのまわりがぐちゃぐちゃになっちゃいますよね。ですが、この結露対策に関して、長期優良住宅では全く触れていないんです。甘い断熱性能に言及されているくらいで、サッシに関しての言及はなし。さらに窓の性能についても、言及されていません。せめてオール樹脂サッシくらいの基準はほしいですよね。
重要な項目②シロアリ対策
こちらも全く書いていません。「高さ1mまで防腐処理をしましょう」という項目はありますが、そんな対策では全く効果なし。白アリは来てしまいます。白アリ対策としては、基本的には侵入路の封鎖が大切です。
耐震対策をしても劣化対策をしても、白アリに食べられたら、もうおしまい。家も弱くなるしダメになってしまうので、やっぱりこちらの項目もほしいですよね。
重要な項目③気密性能
「高気密・高断熱住宅!」なんてスローガンを掲げているくせに、実は高気密は担保されていないという矛盾があるんです。気密測定もやらなくていいし、気密性能のc値の基準も一切ありません。
気密性能が低いと家の中に冷たい空気が侵入し、そこが結露して内部結露が起き、寒いだけではなく家が朽ちていく原因になってしまいますよね。
重要な項目④換気システム
こちらもめちゃくちゃ大事なシステムです。人間の健康も家の健康も、空気を流してやることがとても大切です。床下のところに空気を流さないと白アリの原因になります。また、家の中もちゃんと空気を動かしてあげるとカビが生えにくくなります。家の全体の隅々まで換気できていないと、カビが生える原因にもなってしまいます。
他にも、メンテナンスのことも書いた方がいいですよね。換気システムがあっても、それをオフにしてしまうと役に立ちません。ちゃんと稼働し続けてフィルターを掃除し、機械が壊れたら直すということも条件に入れないと、家を維持することはできませんよね。
長期優良住宅をとると税制面で優遇されるもの一覧と役に立たない理由は?
長期優良住宅は性能面だけではなく税制面でも、ほとんどの人にとっては役に立ちません。たとえば仮に性能面では微妙だとしても、税制で得になるならメリットになりますよね。もちろん長期優良住宅の認定をとることで得をする人もいますが、実はほとんどの人が得にならないんです。
では、長期優良住宅の認定をとることで、優遇があるもの一覧を見ていきましょう。
- 住宅ローン控除
- 登録免許税&固定資産税
- グリーン化事業
もらえるお金は人それぞれとはいえかなり大切な部分ですが、実はそれ以上に大切なことがあります。それは認定取得の費用との比較。タダで長期優良住宅の認定がとれるわけではないので、検査費用などを考えなければなりません。
たとえば認定取得の費用が25万円以上かかってしまうなら、税制優遇が25万円以上ないと意味がありませんよね。それよりも少ないなら、取得しても得じゃないので、わざわざやる必要はありません。
ではなぜ、ほとんどの人にとってはあまり得にならないんでしょうか。その理由を見ていきましょう。
税制面の優遇①住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、一般的に一年間の上限が40万円です。ただし長期優良住宅にすると、上限が50万円にアップするんです。一年間で10万円あがって10年間続くので、最大で100万円も控除されるんです。
「100万円増えるなら認定取得費用の25万円なんて楽々じゃん!」と思ってしまいたいところですが、「年収が800万円であり、かつローンを5,000万円以上組むような人」じゃないと、あまり得にならないんです。年収800万円となると総人口の10%くらいと言われているので、なかなか該当しないですよね。
というのも、住宅ローン控除というのは、あくまで払った税金が戻ってくる制度です。だからたとえば年収が500万円~600万円の人だと、家族構成にもよりますがローン控除の上限額は大体30万円になります。そうすると、上限を40万円から50万円にアップさせたところで、返ってくる額は30万円のままですよね。つまり戻ってくる対象の額がそもそも40万円以上の人じゃないと、関係ない話なんです。
もう一つ、ローンが5,000万円以上というのにも理由があります。ローン控除というのは、ローンの借入額の1%が上限なんです。そのためローンの借入額が4,000万円ならローン控除の上限額が40万円になります。そのため、ローンを4,000万円しか借りてない人が長期優良住宅の認定をとっても、やっぱり返ってくる金額は40万円のままなんです。しかもローン控除の上限は借入額の残高なので、返すごとに上限は低くなります。そう考えると、ある程度の額を借りないと恩恵を受けることはできないんです。
税制面の優遇②登録免許税&固定資産税
登録免許税は登記の時に少し安くなりますが、これは大した金額ではないのであまり考えなくてもいいです。
考えるべきは固定資産税ですが、家のサイズや地域にもよるとはいえ、長期優良住宅の認定をとることによって約10万円~15万円税金が安くなります。そのため、これだけで認定取得費用はペイできないものの、割と大きな金額になりますね。
仕様や地域によって基準は異なりますが、具体的な金額を見ていくと、木造住宅の場合は1㎡あたりの固定資産税が平均として約9万円くらいです。そのため、100㎡の家だと約900万円になります。固定資産税の税率は1.4%なので、約12万円。さらに長期優良住宅をとることで固定資産税の半額をまけてくるという減税措置が一般の3年間から5年間に延長されます。つまり、12万円(固定資産税)×1/2(半額)×2(年間)=約12万円となります。
長期優良住宅の認定を取得することで、100㎡の家だと約12万円得するわけですね。ただしこの減税措置も広さの上限があり、120㎡までとなっています。120㎡だとすると、先ほどの計算式に当てはめると約15万円安くなる計算になります。2年間で15万円得をするといっても、25万円の認定取得費用には届かないので、これだけでペイすることはできません。
そのため残りの認定取得費用との差額に関しては、ローン控除の方で得をとらなければなりません。そうするとやっぱり年収800万円以上、ローン総額が4,500万円~5,000万円以上の人が対象になってくるので、該当する人はしっかり計算してください。「合計で認定取得費用より得になるぞ!」ということであれば、税制面でも得をします。
税制面の優遇③グリーン化事業
グリーン化事業というのは、ざっくりいうと地域ごとに工務店がグループを組み、そこに所属している工務店であれば長期優良住宅を取得することで補助金が最大140万円出ます、という制度です。なので、いいなという思う工務店がグリーン化事業をやっているのなら、認定取得費用の25万円が余裕でペイできるので、長期優良住宅の認定はぜひぜひとってください!
ただし、グリーン化事業をやっている工務店でも、正直微妙な工務店もあります。良い工務店ももちろんありますが、微妙な工務店も入っているので、そこだけは注意してくださいね。
長期優良住宅認定を取得した場合のよくあるQ&A!
Q1. 長期優良住宅認定を取得したら将来の価値は上がる?
これは、正直ちょっと分かりません!長期優良住宅の認定を取っておくことで将来的に高く売れる可能性は確かにあります。ただし、前述したように長期優良住宅の認定基準はとても甘いもの。20年~30年後には「これってあまり意味ない基準なんじゃないの?」と思われてる可能性もあります。
そのため、将来はまだ分からないので、将来価値を考えて長期優良住宅の認定をとるメリットはそれほどないと考えられるでしょう。
Q2. 標準仕様ならいいのでは?
長期優良住宅が標準仕様になっている会社なら、追加費用がかからないのでお得ですよね、という人もいます。ですが、標準仕様=タダ、というわけではありません!
「長期優良住宅が標準仕様だから」という理由で工務店を選んでしまうと、微妙な工務店になってしまう恐れがあるので、やめた方がいいでしょう。もちろん税制優遇でペイしないと損をしてしまいますし、さらに性能面でも恩恵はないので、あまりおすすめできません。
Q3. ないよりはあった方が良くない?
これもよく聞かれますが、あくまで私としては家はコスパを高めるべきだと思っています。そのため経済的に大きく得をするわけではなく、性能面でも微妙なら無理にやる必要はないかな、と思います。
お金があるならとった方が良いですし、それこそ長期優良住宅認定がないよりはあった方がいいですが、費用対効果という面で考えていくとどうなんだろう?というのが私の意見です。
Q4. フラット35Sの金利優遇になりますよね?
これはこちらの記事 「【住宅ローン】フラット35のメリットと手数料・金利を下げる方法」でも解説していますが、確かに長期優良住宅はフラット35Sの対象になっています。フラット35Sでは長期優良住宅の認定をとることで、金利がグッと下がります。
とはいえ、わざわざ長期優良住宅にこだわらなくても、耐震等級を3にするとか、一次消費エネルギー量等級の5をとるなどの方法でもフラット35Sの金利優遇の条件をとることはできます。長期優良住宅の認定をとるよりももっと簡単な条件もあるので、フラット35Sの金利優遇のためなら、もっとコストのかからないやり方で取得した方がいいでしょう。
まとめ
長期優良住宅があまり役に立たない理由
- 長期優良住宅は性能面では微妙
- 長期優良住宅の税制優遇を受けられるのは限られた人だけ