2024.11.30
「リフォームよりも建て替えの方が良いですよ!」と言ってくる工務店には要注意。新築をメインにやっている住宅会社としては建て替えを推奨するものですし、リフォームは手間がかかるものの利益が上がりません。そのため建て替えを勧めるところが多いですが、果たしてそれが施主にとってベストなのかは別の話です。そこで、今回は「これくらいならリフォームがおすすめ」「ここまでやりたいなら建て替えがおすすめ」という目安を紹介します。
一方、リフォーム会社も建て替えではなくリフォームを推奨するものです。そのために適当なことを言うこともあるので、その思惑や悪徳住宅会社が使いがちなトークも紹介します。
施主が冷静に判断できるようになってください。この記事を読んでいるみなさんに加えて親世代が建てた実家がリフォーム時期を迎えている方もいますよね。そういった親も悪徳業者に騙されないように、息子・娘世代がしっかり理論武装してくださいね。
今回は以下を詳しく解説していきます。
目次
新築業者とリフォーム業者の思惑
新築業者の思惑
新築をメインでやっている住宅会社にとって、リフォームは面倒なもの。手間がかかる割には単価が伸びません。新築住宅よりも利益率を高く設定しても、現場で不測の事態が発生することもあるので、利益が減ることもあります。
そのため、新築をメインにやっている会社は「リフォームじゃなくて新築にしましょう!」と言って、新築の方に振り替えたい気持ちがあります。
リフォーム業者の思惑
リフォームやリノベーションをやっている会社はリフォームが得意です。ただ、売り文句として「家を建て替えるのは高いから、フルリノベーションの方がおすすめ」と言います。
ただ、リフォームやリノベーションの打ち合わせが進んでいくと、施主側はどんどんやりたくなります。「壁紙をやるなら床も直そう」「床を直すならキッチンも変えよう」「キッチンをやるなら、実は気になっていた雨漏りもやっておこう」と広がっていきます。つまり、リフォーム会社としては小さい金額で一度お客さんをゲットしておけば、あとから追加で金額を高くすることができます。「契約後の追加費用が出てくるのはリフォーム業界としては当たり前」という面もあるため、「建て替えよりも安いですよ」という言葉通りにならないこともあります。
このようなそれぞれの思惑に惑わされないように、施主が冷静になって「建て替えとリフォーム、どちらの方が適切なのか」ということを判断してください。そのために、一般論として目安になる判断基準を紹介します。
【家の不満別】リフォーム・建て替え判断基準
内装が汚い
壁紙がボロボロになっている、床が傷んでいるなどの理由で見た目が悪くなっている時はリフォームがおすすめです。これくらいなら100万円以内で対応できます。それで快適に過ごせるなら、リフォームが良いですよ。
住宅設備が古い
キッチンの寿命は30年前後です。キッチン自体は大丈夫でも、水栓などが傷んでくる場合もあります。さらに、食洗機がない、コンロがIHじゃないなどの不満が出てくることもあります。
この場合もリフォームがおすすめです。全部変えたら数百万円かかりますが、見違えるように綺麗になります。内装やキッチンを変えると新築並に綺麗になるので、リフォームで対応してください。
間取りを変えたい
(出典:SUUMO)
昔の家は仕切りが多いので、それらをとりたくなることもあります。
古い間取りの場合、リフォームやリノベーションでも構いません。ただし、程度によります。昔の家が壁で区切られているのは断熱性能が低いからです。暖房効率を上げるために狭い部屋を作っていました。そのため、昔の家のままで壁をぶち抜くと、めちゃくちゃ寒い家・暑い家になってしまうリスクがあります。もちろん、耐震的に大事な柱などは抜けません。
よくある質問:リフォームのローンはどう?
リフォームのローンは新築時よりも不利です。新築の場合は30年・35年・40年といったローンがありますが、リフォームの場合は最長15年が目安です。金利に関しても、新築の変動金利は0.4~0.5%程度なのに対して、リフォームの金利は1.0~2.0%が多いです。また、借入可能額も少ないです。1,000~2,000万円までとされているところが多いです。
このように、リフォームの方がローンの条件は悪いです。ある程度、自分たちで現金を出していかなければなりません。
シロアリ被害に遭った
昔の家はシロアリ対策をしっかりしていないため、シロアリ被害に遭うこともあります。ピンポイントな被害ならシロアリ対策業者に依頼をして、シロアリの駆除や防蟻対策をすれば良いです。ただし、薬剤での防蟻対策の効果は5年間が目安なので、5年に1度は対策が必要です。またシロアリによって木材が食われて家の強度が保てない場合、木材の強度を高めるための補強リフォームが必要になります。
メンテナンスフリーでシロアリ対策をしたい場合や、家全体がシロアリの被害に遭っている場合は、建て替えが必要になります。
詳しいシロアリ対策に関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。
関連記事:【完全攻略】5人に1人が被害に遭う木造住宅のシロアリ対策!新築時が特に重要なワケ
雨漏りしている
雨漏りの場合は程度によります。一箇所の雨漏りで、そこを直せば良いくらいならリフォームで良いです。ただ、色々な箇所で雨漏りをしている場合や木が朽ちていて屋根や外壁も直さなければならないような場合だと、建て替えと同じくらいの1,000万円以上のお金がかかります。
今まで紹介したように、内装を綺麗にして住宅設備を新しくして、間取りを変えてシロアリ対策も雨漏り対策もする、ということになるとかなり費用が掛かります。建て替えよりは安いものの、それなりの金額になるので、リフォームにするか建て替えにするか悩むラインです。
一方、これから紹介するようなケースだとリフォームだけで対応するのはだいぶ厳しくなります。
暑い・寒い
これは根本的な断熱性能の低さが原因です。特に30~40年前の家だと無断熱の家も多いです。いくら暖房しても温まらないような家もあります。
この場合、まず検討すべきなのは窓です。昔の家はアルミサッシのシングルガラスにしていることもあり、これだと寒いのは当然です。寒い場合、窓を変えることを検討してください。これで劇的に変わる場合もあります。戸建に限らず、マンションの場合も窓対策をするのがおすすめですよ。
本格的な断熱リフォームの場合
本格的な断熱リフォームの場合、建て替えが必要になります。窓だけならリフォームで良いですが、前述の内装の改装や間取りの変更なども同時に行うと、1,500万円くらいかかる可能性があります。もちろん見積を取る必要はありますが、恐らく建て替えよりも少し安い程度の費用がかかります。
さらに、リフォームは今後のメンテナンスも新築と比べると大変になるので、こういった点も視野に入れて検討する必要があります。
よくある質問:簡易的な暑さ・寒さ対策は?
リフォームするほどではない状態で暑さ・寒さ対策をする場合は、以下の方法がおすすめです。
暑い場合は、日射遮蔽に失敗している人が多いです。昔の家は窓が多く、特に東や西に窓が多いので、日射遮蔽を強化してください。アウターシェードなどではなく、葦簀(よしず)やすだれ、グリーンカーテンでも十分です。これが一番効果があるので試してみてください。
エアコンが古い場合は最新機種にすることで改善する場合もあります。また、扇風機ではなくサーキュレーターを使うのもおすすめ。サーキュレーターで首振りをせずに上向きに風を出すと、空気の流れができて温度を下げなくても涼しく感じられますよ。
寒い場合は、窓に断熱シートを貼るのがおすすめです。見た目が汚くなったり張り替えが面倒というデメリットはありますが、やはり窓の対策をするのがおすすめです。今は補助金もあるので、窓の交換や内窓といった窓のリフォームを検討してください。
カビが生えている
カビが生えて空気が悪い場合、換気計画の見直しが必要なので、建て替えなければなりません。「昔の家は隙間風が多いし換気できるんじゃないの?」という人もいますが、隙間風では家全体の換気はできません。一定のところだけ風が流れるので、空気が淀んでカビが生える原因になります。床下も同様にカビが生えている場合は対策が難しいので、家全体の換気計画から変えていく必要があります。
カビによってぜんそくや体調を崩している場合、健康維持のためにも建て替えの選択肢を検討してください。
地震が不安
地震が不安な場合、建築時期によって対応が異なります。
建築時期による目安
- ✕:1981年以前→建て替えを!
- △:1981~2000年→基礎の強度UPは難しいが、ある程度の補強は可能
- 〇:2000年以降→耐震リフォームで強度UP
1981年より前の旧耐震で建てられた家は耐震リフォームができないわけではないですが、大変ですし限度があります。こういう家の場合、建て替えてください。2000年以降の新耐震基準で建て、許容応力度計算で「2」以上の耐震等級をとれば安心です。
1981~2000年は地盤調査が義務化されていなかった時期です。この時期に建てられた家は基礎が弱い可能性があります。基礎の強度を現在の新耐震の基準まで上げるのは難しいですが、ある程度の補強は可能です。
2000年以降に建てられた家には、新耐震基準が適用されています。耐震リフォームを行うことで強度をあげることができます。
関連記事:『耐震等級だけじゃダメ!新築戸建ての「地震対策」に必須な”4項目”を徹底解説!』
よくある質問:フルリフォームは安いと聞いたが?
「フルリフォームの方が安い」というのは、リフォーム会社の営業トークの場合があります。もちろん金額としては建て替えるよりフルリフォームの方が安くなることはありますが、古家は古家です。メンテナンス費用もかかりますし、住んだ時の快適性も違います。
フルリフォームと建て替えの費用が400~500万円くらいの差しかないなら、建て替える方がおすすめです。
ただし、建て替える際には大きい家を建てないことが大切です。子どもたちが大人になっていれば大きな家も要らないので、20坪くらいで2LDKの平屋で十分ですよ。
そうすると「子どもたちが帰ってきた時に泊まるところがないのでは?」「みんなで集まる時には広い家の方が良い」と言われることもありますが、年に数回のために大きな家を建てて、老後に不安を抱えるのはおすすめしません。
みんなで集まるのが狭いところでも良いですし、リビングに併設しているミニ和室を作っておけば布団2枚敷いてそこに泊まることができます。もちろん、近くのホテルに泊まることもできます。
建て替えもリフォームも大変なら、そこを売って賃貸に住む、近くの小ぶりな分譲マンションに引越すなどの選択肢もあります。絶対に戸建を維持するよりは、必要最低限の荷物を持って小さな家に移る選択肢も検討してくださいね。大事なのは、自分が安心できることですよ。
まとめ
【不満別】リフォーム・建て替え基準判断
- 内装が汚い
→リフォーム - 住宅設備が古い
リフォーム - 間取りを変えたい
→古い間取りならリフォームだが、寒い・暑い家になるリスクあり
→リフォームのローンは新築ローンよりも不利 - シロアリ被害に遭った
→シロアリ対策業者に依頼を! - 雨漏りしている
→程度による - 暑い・寒い
→断熱性能が低いので、アルミサッシの窓を変えてみる
→本格的に断熱するなら建て替え! - カビが生えている
→建て替え!換気計画の見直しを - 地震が不安
→建築時期による。1981年以前の家なら建て替えを!